
Vol.065 「江戸木箸でマイ箸を見つけよう。後編」

築地の下町天ぷらでガツンと江戸前を味わってきました
こんにちは小西です。僕は誕生日も過ぎて、また一段と「頑固爺い度」が増したような気がする毎日を過ごしています。
頑固爺いと言えば、週末にてんぷらが食べたくなり、築地の「いしい」にお邪魔しました。もう、かれこれ25年位通っていますが、元気になりたい時には、ここのガツンとした天丼が無性に食べたくなるんです。築地で働く人たちの活力となるようにと、少しこってりした味付けがウリですが、とにかく素材が新鮮で、旬の魚や野菜を堪能できます。そして、いつもカウンター越しに楽しむのは、大将と女将さんの喧嘩とも何とも言えない夫婦漫才的な掛け合いです。「お前はいいから黙って、とっととご飯よそってくれよ!!」みたいな声が飛んだら、「あんた、揚げる順番間違ってるわ!」とすかさず言い返す女将さんの方が一枚上手かな(笑)。でも、こんなに長年、夫婦仲睦まじく店を営んでいるなんて、羨ましい限りです。
ご主人の手際よい作業は、揚げ場がまるでステージの如く、ある意味、見事なパフォーマンスであり、目が釘付けになってしまう程です。今回はかき揚げ抜きの上天丼(通称、ヌキ丼)を注文。かき揚げがちょっと昼には重かったので、あなごを入れてもらいました。また、ここの自慢の「さかな天丼」は、めごち、キス、牡蛎、あなご、白子、車エビなど旬モノを揚げて、揚げたてをジューッとタレにくぐらせたものをご飯の上にのっけてくれたものです。塩で食べてほしい素材は揚げたてのままで盛られて出てきますが、これも絶品ですよ。
倉本聰似の頑固な大将は河岸の親方と最近の築地の観光バスなどに苦言を呈しながらも、「ウチもお客様開拓には努力してる訳よ。ちゃんと何か1品サービスするしなぁ」と語っていた。僕ももっと頻繁に足しげく通わなくては。僕もこういう人生の先輩たちのひたむきな頑固さは大いに学びたいと思っております。
『いしい』は、築地本願寺の裏手なので、ぜひ皆さんにもオススメの江戸前天ぷら屋さんです。(築地六丁目 いしい 電話:03-3541-8474)
江戸前の話が出ましたが、今週は前回に続いて、『江戸木箸/大黒屋』のご主人、竹田勝彦さんの作る「江戸木箸」後編をご紹介したいと思います。

究極の箸は七角削り箸。どう握っても自然にしっくりくる箸の発明です

仕上げ用のカンナ台

五角削り箸と七角削り箸
「握り易く、つまみ易い箸」。これが竹田さんが何度も何度も試行錯誤して生み出した数々の箸のコンセプトです。「年配の方や子供さんは、力が入りにくいから。軽く握るだけでもつまみ易い箸を創りたいと考えました。上手な箸の選び方は、まずは太いか細いかで判断することが大事だそうです。
さて、竹田さんが開発した「ずんぐりの箸」は、その名の通りずんぐりむっくりの箸です。「長い箸だとつまむ力が入りにくいのでお年寄りや小さな子供のために考案しました。特に年配の方は手に力が入りにくい。これは短くてずんぐりした太い胴から、細い先端まで傾斜があるので、力がいらず楽に使えるんです。リハビリ時にも使われていますよ」。なるほど。これこそ正にユニバーサルデザインですね。
この「ずんぐり箸」は、短くても使い易い箸なので、僕ら大人のための「携帯用マイ箸」としてもオススメです。よく真ん中からネジ式で二つに折れる携帯用箸も見かけますが、それだと真ん中に重心がきてしまい、とても使いにくいそうです。
研究熱心なご主人が、次に「これ、持ってごらんなさい。今試作中の七角形の箸です」と差し出されたお箸は、何とも言えず手にしっくりと収まる正に「完全密着の箸」でした。「七角削り箸は51.444度と割り切れないので経験と勘で削っています。面のアタリがしっくりくるので、どう持ってもピタりとハマる箸なんです」
そして、この究極の「七角形の削り箸」は、まだ世の中に出していない試作品なので、お店を直接訪れた方だけに販売しているそうです。
絶妙のバランスで2本がぴたりと合う様に削られた箸
さて、もち手の部分の話ばかりが続いてしまいましたが、箸づくりで一番気を使うのが先端の部分だそうです。「食い先一寸が箸の命。口元に一番近い先端の3センチ位の箇所が一番重要なところ。 」普通に持った時に、先端部がぴたりと合うように削らなくては使いにくいんです。箸づくりには図面なんか無いし、経験と自分の手の勘で削ります。
この細い先端でも折れずに使ってもらう為に、箸の素材も固い黒檀、紫檀、たがや等が使われています。黒檀や紫檀はどんどんと貴重な素材になってきているので、将来手に入らなくなってしまうかもしれないと嘆いていました。そういえば、小さい頃に聞いた話ですが、僕の実家での事、祖母が黒檀で出来た箪笥を売ったら3年間生活が出来たそうです。その頃から黒檀は大変貴重な素材だったみたいですね。
さて、箸をこよなく愛する竹田さんからこんなお願いがありました。「よく色んな料理屋に伺うけれども、料理人が料理にこだわり、皿や器にこだわるのに何故お箸は割り箸なんだろうと疑問に思う事が多々あるんですよ。せっかく日本に生まれて、様々な料理を楽しむのだから食べ物によっても箸を使い分けてみたらどうでしょうか」とのこと。
「細い箸(利休箸)は、刺身や軟らかい食べ物に使い易いのです。逆に太い箸はお肉料理とかゴツいものを美味しく感じさせてあげる見た目の調和があります」
竹田さんは、普通の箸以外にも「納豆箸」や「豆腐箸」などを作っています。納豆箸はかき混ぜ易いように太く丸くなってるし、豆腐箸は崩さずにつかめるように鴨の口のように平べったく削っています。思えば、メニューによってフォークやナイフを使い分けるように、食べ物ごとに箸を使い分ける習慣があっても、おかしくはないですよね。
また、江戸木箸独特の木の肌合いは、面取りにひとつひとつ手でグラインダーをかけ、カンナで削り、仕上げに「生漆」を擦り込んであるため、長く使える強い箸になります。
「使い込んで先が折れたりしたら、どうぞ持って来てください。私が削って直してあげますよ」と何とも嬉しいお言葉を頂いきました。これぞ、職人の粋だとも思います。
「お客様の中には、何十年と使い続けた黒檀の箸を手に合うように新たに削り直して欲しいと、リクエストしてくるお客様も居ます。えぇ、そりゃあ、ちゃんと削り直してさしあげてます。そしてここでは、今までに二百種類以上もの箸を作ってきているので、あなたにぴったりと合う箸も必ず見つけられると思います。毎日ご自分が使う大切なお箸なので、是非ここに来て、いろんな箸を手に持ってみて、一番しっくりとくる自分だけのマイ箸を見つけてくださいね」。
ご自身で一本一本箸を創り続けている職人ならではの、数々の深みのある発言に、僕は非常に感銘を受けました。今では二人の息子さんも後継者として一緒に箸を作り続けているようです。なんとも頼もしい限りですね。
皆さんも是非、一度『江戸木箸/大黒屋』を訪ねてみてはいかがでしょうか。家族がそれぞれの「マイ箸」を見つけて、心温かい食卓を囲んでいただけると僕も嬉しいです。
「
江戸木箸 大黒屋」(外部サイトへ)
住所:東京都墨田区東向島2−3−6
電話:03−3611−0163
営業時間:月〜土 10:00〜17:00
定休日:日、祭、第2・3土曜日



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