お腹がいっぱいになるだけの照明は、
もういらない。
日本の照明事情は、蛍光灯が急速に普及した戦後の高度成長期がひとつの転換期を迎えました。このころから、夜になっても部屋が煌々と明るく照らされていることが豊かさの象徴だと考えられるようになったのです。もちろん蛍光灯はランニングコストがかからない光源として、経済成長期には重宝されていたかもしれません。しかし時代は変わったのです。おそらく、部屋全体を一様にまぶしく照らす蛍光灯の光に無駄を感じる人が増えてきているだろうし、明るさでおなかいっぱいになることよりも、味わいのある“おいしい光”を堪能したいという需要が高まってきているのではないでしょうか。
住宅照明は“量”より“質”で考える時代に
いわずもがな、私たちは食糧不足の時代ではなくグルメの時代を生きています。
現代人にとって、食事とは“量”より“質”、満腹になれることよりも味や香りを楽しめることに、真の価値があるのではないでしょうか。同じように照明だって、“とにかく明るいだけの光”ではなく、上質な“おいしい光”が求められているように思えます。
“おいしい光”とは、たとえば団らんの場に華やいだ気分をもたらしてくれたり、ゆったりとくつろげる時間の流れを感じさせてくれたり、大切な人を美しく映し出したりするような光。まぶしすぎる照明環境を卒業して、生活空間に“おいしい光”を取り入れることができたなら、毎日は楽しく、変化に満ちたものになるはずだと、私は信じているのです。
生活のシーンに合わせて“おいしい光”
を提案する「光のソムリエ」
部屋の照明を変えるためには、高い照明器具を買いそろえたり、工事をしたりしなければならないのでは、と思っている方もいるかもしれません。しかし照明を変えることは決して難しいことではなく、費用がかかることでもないのです。ちょっとした工夫ひとつで、“おいしい光”は十分に堪能できるものなのだから!
私の照明デザインのポリシーは「NO LIGHTS BUT GOOD LIGHT」。この美味なるスピリットを皆さんにも楽しんでいただくために、今回から「光のソムリエ」で、住宅空間の照明デザインについてご紹介していきたいと思っています。皆さんのデリシャスな照明生活のヒントとして、少しでも役立ててもらえれば幸いです。
■プロフィール
東海林弘靖
1958年生まれ。工学院大学・大学院建築学専攻修士課程修了。
光と建築空間との関係に興味を持ち、建築デザインから照明デザインの道に入る。1990年より地球上の感動的な光と出会うために世界中を探索調査、アラスカのオーロラからサハラ砂漠の月夜など自然の美しい光を取材し続けている。2000年に
有限会社ライトデザイン(外部サイトへ)を銀座に設立。超高層建築のファサードから美術館、図書館、商業施設、レストラン・バーなどの飲食空間まで幅広い光のデザインを行っている。光に関わる楽しいことには何でも挑戦! を信条に、日本初の試みであるL J (Light Jockey)のようなパフォーマンスにも実験的に取り組んでいる。
照明ってとっても重要だと思います。
私の実家では、蛍光灯はこども部屋の勉強机の上のみにとりつけられており、リビングと食卓は間接照明でした。
ずっとそうだったので、ともだちの家にお邪魔したときなど、あまり明るくて少し戸惑ったりしました。
結婚して新居に引っ越してからも、照明が蛍光灯の光源一個しかなくなんとなく顔色も悪く見える・・・インテリアには即、照明器具を買いました。
ダンナの実家も明々としていたので、ダンナ自身最初は「暗いなぁ」と感じたようですが、今ではリビングのほの暗さが疲れを癒すようです。
東海林さんのおはなし、とても興味がわきました。夫婦がすごす時間って、夜しかないんですよねぇ・・・じっくり話し合ったり、くつろいだり。
これからまたさらに居心地のよい、素敵な空間をつくるアイデアを期待しています。
そうそう、これから子供も増えるので、こどもにとっての明かりとその重要性についても、もしお話が聞けたらなって思っています。