利休が「侘び茶」の世界に残した“明かりのシナリオ”
和室における照明術を考える場合、イメージしてもらいたいのは「侘び茶」の茶室です。
千利休によって確立された侘び茶では、二畳という狭い茶室に主人と客とが相対して、壮大なイマジネーションの空間を楽しみます。
そこでは主人と客人との距離感がとても緊密なものとなるため、光のあたる角度がちょっと違うだけで、相手の表情が大きく異なって見えるものなのです。
たとえば、和ろうそくなどの照明装置を主人の真横になる部分に置くと主人の周りは明るく見えますが、客人から見る主人の顔は影になってしまい、その表情をうかがい知ることができません。
これではいけません! おもてなしの心は、客人に不安な気持ちを与えないように、主人の顔がよく照らされる位置に明かりを置くことが大切なのです。
闇のなかの小さな光が心の内側を照らす

和風建築の巨匠、吉田五十八氏の建築に使用された照明を忠実に復刻したスタンドライト「吉田五十八」。
ヤマギワ株式会社(外部サイトへ)
侘び茶の世界では、ほの暗い茶室のなかで小さな光を楽しみます。
御存じのように、侘び茶の茶室とは庭園のなかに作られる小さな建築物で、京都などの街中にあっても、大自然のなかで季節を楽しんでいるような感覚になれるものなのですね。
茶室には“空間トリップ”してしまうような不思議な力があると思うのです。
そんな茶室での“空間トリップ”感覚を演出するうえで、小さな光は重要な存在となります。闇において、小さな光は人間を暗所視状態(夜の目)に安定させ、瞳孔とともに人の心をも静かに開いていくのです。
また、別のいい方をすれば、心の内側を照らし出すような不思議な効果があるといってもよいでしょう。
わずかな光の変化が心を動かし、そこには、明るいがゆえに見えていなかったデリケートな陰影、ものや人の繊細な表情が、より美しく、またはっきりと伝わってくるのですね。
これが、茶室における明かりの考え方であり、和室における照明術の基本にもつながっていくのだと思います。
和の佇まいを演出する照明術“3Lの法則”とは?
こうした侘び茶の茶室に学ぶ日本の伝統的な“空間トリップ”照明には“3Lの法則”というものがあるのです。
これから和室における照明術のポイントとなる“3Lの法則”について、ご紹介しましょう。
3Lその1・・・Low Position 〜光の重心を低くする〜
和室といえば、畳に座ってすごす空間。洋室に比べると目線の高さが低いのが特徴です。
そのため、光の重心(空間における光源が集まる場所の高さ)は低い位置にあるほど、和室らしい佇まいが生まれてくるもの。
光源を、座ったときに目線の平均的な高さである120cm以内に設置して、光の重心を低くしてみましょう。
3Lその2・・・Low Illumination Level 〜照度を低くする〜
侘び茶の茶室の話からもわかる通り、和室の明かりは美しいほどにほの暗いものです。
本当の侘び茶の空間はほんの数ルクスですが、私たちが過ごす和室の照明も明るくしすぎず、「薄明り」(50ルクス程度)を目安に照度を調整するといいでしょう。
3Lその3・・・Low Color Temperature 〜色温度を低くする〜
色温度という言葉はこれまでも何度がご紹介しましたが、これは光源の色味を表す指標のことです。色温度が低いほど光は赤みを帯び、高いほど青みを帯びます。
照度の低い和室の雰囲気を楽しむ場合、提灯やろうそくなどの赤みを帯びた光のほうが絶対的に快適を感じられるのです。
コンビニエンスストアやドラッグストアの明かりなどで、都市は24時間ひたすら明るい場所となっています。しかしそんななかでも、美しい闇とそのなかに浮かび上がる薄明りに、心の機微を求めてみてはいかがでしょうか?
この秋の夜長に実践する“3Lの法則”は、あなたの和室を豊かで麗しい日本の空間として見せてくれることでしょう。
パークホームズ久我山(分譲済) リビングルーム
その他のモデルルームの事例を見る>
三井の住まいへ
今回のテーマ、とっても面白いですね!
時代劇の色んなシーンを。。思い出しながら読んじゃいました(笑)
確かに、和室の照明は低い位置にあったような記憶があります。
我が家には畳の部屋はありませんが、
ぜひ、実践してみたいと思います!