映画作りに携わるスタッフの中に、「撮影監督」という人がいます。作品の全編を通して画面が醸す雰囲気のことを映画用語でルックというのですが、監督とともにこのルックを作り上げるのが撮影監督の役目なのです。
具体的な仕事内容は、映像の構成、フィルムやレンズ、カメラの選択、美術セットや衣装の色、もちろん照明のあり方などもその範疇で、映画の視覚的な部分のほぼすべてを担当しているといっていいでしょう。
「光の魔術師」にして「貴公子」
『光で書く 撮影監督ストラーロ』(※絶版)
ヴィットリオ・ストラーロは、光の魔術師と呼ばれるイタリア人の撮影監督です。
1940年に映画技師の息子としてローマで生まれたストラーロは、18歳でイタリア国立映画学校に最年少で入学。29歳でベルナルド・ベルトルッチ監督と初コンビを組みます。その後フランシス・フォード・コッポラ、ウォーレン・ベイティなど名だたる監督たちとともに仕事をしています。コッポラ監督の『地獄の黙示録』(1977)、ベイティ監督の『レッズ』(1981)、ベルトルッチ監督の『ラストエンペラー』(1987)ではアカデミー撮影賞を受賞するなど、世界的な撮影監督のひとりです。
そんな彼は、貴公子のようだともいわれています。F.コッポラにして、「彼はいつも白い服を着ていて、どんな泥の中で転んでもまったく汚れない」といわしめるほどにカッコいいのです。このコッポラの言葉は、『光で書く 撮影監督ストラーロ』というドキュメンタリービデオに登場します。
かねてからのストラーロファンである私は、このドキュメンタリーをくり返し観ているのですが、その中で彼は「芸術家としての撮影監督の役割は、光で物語を書くことだ」「色は感情を表す。青は沈着冷静そして不安、赤は情熱、緑は不安・・・」と語っています。このドキュメンタリーを観るたびに、私には彼の言葉の意味がじーんと伝わってくるのです。
「光のソムリエ」的・映画の鑑賞法
光の効果を意識しながら映画を見てみよう
能書きはそこそこにしておいて、ストラーロが撮影監督を務めた作品を紹介していきましょう!あわせて、私が好きなシーン(数えだすときりがないので、そのほんのいくつか)を挙げてみたいと思います。
「暗殺の森」
暗殺の森 ※絶版
1970年制作
監督:ベルナルド・ベルトルッチ
ローマとパリを舞台に、ファシズムの台頭から崩壊までを描いた物語。
私のお気に入りは、主人公のマルチェロと新妻ジュリアの色気のある抱擁シーン。異常に巨大な部屋にて、ブラインドから差し込む光・・・部屋中に光と影のストライプ模様を作り出すシーンがとても印象的です。思わず「ストラーロ最高!」と叫びたくなります。1940年代の雰囲気を感じられる映像美です。
「ディック・トレイシー」
ディック・トレイシー/1,500円
(DVD税込価格)/
(c)BuenaVistaHomeEntertainment,Inc.
1990年制作
監督:ウォーレン・ベイティ
アメリカン・コミックの主人公である刑事が、架空の都市で事件を解決していく物語。
闇夜の中で、濡れた道路にギラギラとした赤い光が映り込むシーンは、光によって巧みに緊迫感が演出されていて、とても好きなシーンです。
『光で書く 撮影監督ストラーロ』にこのシーンのメイキングが収録されているのですが、この光を撮るために、航空機の着陸ライトと調光器を組み合わせた独自の装置を作ったのだそうです。
そして道路に散水車を使って水を撒いているのですが、この水面に光ががにじみ込む演出がサイコーです。
「ワン・フロム・ザ・ハート」
ワン・フロム・ザ・ハート/4,935円
(DVD税込価格)/
ジェネオン エンタテイメント
1982年制作
監督:フランシス・フォード・コッポラ
ラスベガスを舞台に、6人の男女の恋と別れを描いたミュージカル映画。
この映画には、週末の過ごし方をめぐる問題を抱えた男女を、赤と緑の光で対比させたシーンがあります。派手に遊んだりショッピングにいそしみたい女のシーンは赤い光に、家でくつろいで過ごしたい男のシーンは緑の光に彩られており、キャラクターの違いが浮き彫りになっています。このことを意識してこの映画をみると、ますますストラーロの虜になっていくのです。
前述のドキュメンタリーのインタビューで、「どんなシーンも優雅さを失わない」とコッポラ監督にいわしめたヴィットリオ・ストラーロ。彼の手でデザインされた画面は、知的でスタイリッシュで、とにかく「カッコいい!」と口に出してしまうほどの素晴らしさです。
みなさんもこのゴールデンウィークに、ストラーロの華麗な光の演出を楽しんでみてはいかがですか?
もちろん部屋の中は、少し暗くしてシアターの雰囲気をつくることも忘れずに!
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