「生物発光」とは読んで字のごとく、生き物が発する光のことです。
代表的なものに、みなさんもよくご存知のホタルやホタルイカ、ウミホタル、チョウチンアンコウなどがありますが、ほかにもヤコウタケなどのキノコ類にも発光するものがあります。
今回はこの「生物発光」について紹介しながら、現代の明かりに対する価値観ついて考えてみたいと思います。
暗闇でほのかに明滅するホタルの詩的な光
私はまだ幼い頃、夏がくるたびに母の田舎でごく普通にホタルを見て楽しんでいました。おそらく水がきれいだったのでしょう。
近くの水田まで出かければ、いとも簡単にホタルと出会うことができたのです。
ホタルは、持っていった懐中電灯を点滅させて見せると、それに反応してどこからともなくツーっと飛んできます。1匹やって来ると、続いて2匹、3匹・・・と、その数はどんどん増えていくのです。
ホタルはある1匹が光を明滅させると、ほかのホタルたちもつられるように光りはじめ、集まっていく性質があるようで、点滅する懐中電灯の光に反応して集まってくるのでした。
飛び交うホタルが暗闇に描く光の残像は、もちろん美しくて情緒的でしたが、それ以上に、この不思議な光を家に持って帰ることにいつも執着していました。ホタルは団扇などで簡単に捕獲することができたので、籠に入れて持ち帰り、家の中に放ってはその美しい光を独り占めしていたのでした。
ところで、この照明デザインの仕事を始めてから、「ホタルの木」と呼ばれる不思議な木があることを知りました。
それは、インドネシア・スマトラ島の森の中にある木なのですが、産卵期を迎えたホタルが、その木を覆うように何千匹と集まってくるのです。
ホタルの発光はオスの求愛活動なので、無数に集まったオスホタルたちは競い合うようにして明滅を始めます。そして、そのタイミングは不思議とぴったり合っていて、木全体がいっせいにふわりと明るくなっては、ふーっと消えゆくように暗くなっていくのです。
まるで木が呼吸をしているかのように、力強く明滅する様子は、神秘的なものでした。(残念ながらビデオでしか見たことがないのですが・・・)。
謎に包まれた「生物発光」のメカニズム
光を発する生物は約800種類いるといわれていますが、丹羽先生いわく、そのメカニズムがわかっているのはほんの数種類なのだそうです。
ホタルの発光は、「ルシフェリン」という発光物質に「ルシラーゼ」という酵素が作用し、空気中の酸素と反応することで光が生まれる・・・というものらしいのですが、驚くのは、「生物発光」が持つエネルギー変換効率の高さです。
人工照明だと、白熱灯が約5%、蛍光灯でも約25%であるのに対し、ホタルはなんと80〜90%という高い効率で、エネルギーを光に換えているというのですから!
この高い変換効率は専門家の間でも注目されていて、「生物発光」のメカニズムを次世代の新しい光源として応用するという研究も進んでいるそうです。
何だかワクワクするお話ですね。
「生物発光」から学ぶ、美しい光のある生活
現代の生活では、照明で闇をことごとく排除して、隅々まで明るくすることがあたり前のように考えられていますが、夏の夜に漂うホタルたちは「光は、闇があってこそ美しいものだ」と、教えてくれているように思えます。
そうです、光は本来もっと詩的で風流なもので、明るくするためだけの道具と考えられるようになったのは、せいぜいここ数十年だけのことなのです。
「生物発光」の原理を照明に応用できる日が来るとしたら、それはビカビカの蛍光灯のような光ではなく、暗いけれども心が解き放たれる、そんな光であったらいいと思うのです。
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三井の住まいへ
「生物発光」が光源として利用される日も、そう遠くはなさそうですね。フライングホタルベッドやフライングホタルソファ、ホタルテレビなど、家のそこかしこでホタルを感じられそうです。天井の陰やカーテン、玄関や中庭の木陰、書斎の本やお風呂の底にもホタルがたくさん隠れていて、闇の中での光の演奏会を楽しむことができる。真っ先に手をあげて、我が家をそんな家にしてもらうように、東海林さんにお願いする日も、案外近いのかもしれない。そんな夢を持ちました。