『からだの中の夜と昼』

千葉喜彦著
『からだの中の夜と昼 時間生物学による新しい昼夜観』
中公新書(外部サイトへ)
まず一冊目は、千葉善彦著『からだの中の夜と昼 時間生物学による新しい昼夜観』(中公新書)です。これは時間生物学という観点から昼と夜を説明している興味深い本で、10年以上前から愛読しています。
この本によれば、生物は体の中に自ら昼と夜の状態を作り出しています。照明を点けたままの明るい状態でも、一定の間隔で寝たり起きたりを繰り返すそうで、このサイクルは概日リズムと呼ばれています。いわゆる体内時計ですね。
概日リズムによる1日の長さは生物によって異なりますが、人間の場合25時間といわれています。つまり普通に生活していると、人は毎日一時間ずつ「宵っ張りの朝寝坊」になるというわけです。しかし私たちは等しく1日24時間というサイクルの下で生活しています。なぜそれが可能なのか? それには光が大きな役割を果たしています。
光は自然界の営みの調整役
地球の自転による24時間の環境サイクルに適応できている理由、それは朝日です。
3000ルクスの朝日を浴びることにより、私たちの脳はリセットされ、1時間の遅れは帳消しにされるのです。朝日を浴びず、夕方ごろに目を覚ましてしまうと、1時間の遅れはリセットされないまま。これを繰り返してしまうと体内時計はどんどん狂い、いつしか昼と夜が逆転した生活に陥ってしまうのです。
人間界には夜がない?
現在、日本の若い世代において夜型の生活が助長されています。
煌々と明るい事務所で深夜にまでおよぶ残業、いつまでも暗くならない街での夜遊び、電気をパチンと点ければ一瞬で“昼”に変わる部屋…。
体を十分に休めることをせずに朝を迎えれば、体内時計をゼロに戻すことは困難になり、リズムの狂いが心身のストレスに繋がります。
単に明るくするだけの照明を手に入れる代わりに、人間は“本当の夜”を失い、ストレス社会を作り上げてしまったのかもしれません。
この本は、そんなことを考えさせてくれる1冊なのです。
『ゾウの時間 ネズミの時間』

本川達雄著
『ゾウの時間 ネズミの時間 サイズの生物学』
中公新書(外部サイトへ)
前述の本を読んでみて、自然界の時間に興味を持たれた方がいらっしゃったら、ぜひもう1冊おすすめしたい本があります。
それは、本川達雄著『ゾウの時間 ネズミの時間 サイズの生物学』(中公新書)です。
体の大きなゾウは100年近く長生きし、逆に小さなネズミの寿命は数年です。
しかし一生のうちの心拍数は、ゆっくりと歩くゾウも、ちょこまかと駆け回るネズミも同じ20億回、不思議なことにほぼ同じなのだそうです。
地球上には実にさまざまな生き物が暮らしていますが、それぞれが体の大きさによって、時間に対して異なった世界観をもっています。
そしてみな、体の大きさに見合ったリズムで生活しているというわけです。
そう思うと、いまの人間の生活リズムは果たしてサイズに見合っているのか?
そんな疑問を抱かせてくれる一冊です。
時間と光の関係
一日に訪れるさまざまな光を意識する
さて、今回ご紹介したこの2冊の本の主なテーマは時間であって光ではありません。
しかし照明デザインのような光を扱う職業につくと、時間の存在を意識しないわけにはいきません。というより、光への関心は、時間への関心とイコールだといっても過言ではないでしょう。
なぜなら朝起きて、カーテンを開けたときに一瞬で飛び込んでくる朝日のまぶしさや、夕方から夜にかけてオレンジから薄いブルーへ、そして暗い闇へと変化する空の色など、惹きつけられずにはいられない自然の光もまた時間とともに変化するものだからです。
照明を突き詰めていくと、瞬時にパーンと強い光を感じさせるのか、それともゆったりと光量を増しながら点灯させるのか、そして点った後、光がどんな状態であるのかなど、その点き方・消え方が重要だということがわかってきます。
空気の澄んだ秋の1日、みなさんも自然の光の変化を意識しながら過ごしてみてください。さまざまな表情を見せる光にきっと驚かれると思いますよ。
そして夜は、ゆっくりと読書の時間をもうけて、今回おすすめした本なども読んでみてください。きっと忘れていた何か大切なものに気づくことができると思いますよ。
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時間と光の関係。
なんだか、秋の夜長にぴったりのテーマですね。
読んでみたくなりました!