
射し込む光が美しい2階の座敷
お蔵というのは、本来外部からの侵入を防ぐ「守り」の造りですから、窓も極端に少ないものです。この座敷蔵には、1階に1カ所、2階に2カ所の小さな窓があるだけですが、その小さな開口部から入る光が室内に独特の美しさをもたらしているのをご覧いただきましょう。ここはお蔵の2階の奧の間。2連の床の間のついた座敷の造りです。ここには座卓と座布団を置いて和風のインテリアにしましたが、金魚鉢などを置いて光をガラスと水で受けとめると、大変涼やかです。
お蔵は、日常の延長で心を遊ばせるスペースとして造りました。1階のスペースの半分はスクリーンとプロジェクターをいれ、映画を楽しむ場です。前回ご紹介した「お酒と音楽を楽しむコーナー」とは仕切なしで続いていますが、こちらにはソファを置いて、がらっと雰囲気を変えてあります。

1階の約半分のスペースを占める映像空間
私は映画が大好きでよく見ますが、お蔵の利用を考え始めたとき、真っ先に思いついたのが「映画館」でした。光を閉ざすお蔵の造りは、映画鑑賞にピッタリです。さらに映画好きが高じて、ゆくゆくは映画を撮ってみたいという夢もあります。そのときはこのお蔵を舞台にしたいと思っています。住まいとは異なる非日常的な空間にふさわしい美の世界を、映像で紡ぎだしたいと考えています。

蔵の前に設けたガラス張りの「前部屋」
再びお蔵の外に出ると、そこは光あふれるガラス張りの前部屋です。コーナーにはコルビジェがデザインした寝椅子シェーズロングが置いてあります。ある夏日のこと、夫はここに寝そべって「涼しいなあ」と大変満足そうにしていました。お蔵の冷気が流れ出して空気をひんやりとさせているのですが、設計したときはガラス張りにして熱がこもるのではないかと、心配だったようです。お蔵の美点「弱冷房」の心地よさと、ガラス張りの開放感とが相まって、居心地のいい空間になりました。
座敷蔵というもの、小説で名前を知るばかりでしたが、拝見して想像していたのとまるで違う立派さに驚きました。おばあさまが夏を過ごされていたということですが、この残暑厳しき中で拝見していると、どんなに涼しく心地いいかとうらやましく思います。
工事前の写真と比べて、お蔵は生き生きと躍動的になりましたね。古い立派な家を維持されるご苦労、拝察いたしますが、ツァイ様ご夫妻の美意識とお知恵を注ぎ込まれて、お蔵は見事に第二の何百年かを生き抜くことでしょう。
Posted by はなひめ at 2005年09月02日 13:56