みなさまこんにちは、ポーレンです。
今回は「愛すべき街の看板シリーズ」を一回お休みして、特集テーマにちなんだお話をさせて頂きます。
住まい今昔を考えていると、生まれてから小学生まで住んだ懐かしい昔の家や、かつては新築だー!と喜んだ現在の実家や、学生時代に住んだ今はなき女子寮、そして長い独り暮らしの中でもこれまでに色んな住まいに暮らしてきたなと、あらためて一つひとつ時代とともに思い出しました。
そんな中で、今でも一番心に残っているのが、数年前までの京都時代に7年間暮らした、北白川の集合住宅です。比較的最近の話ですが、現在の慌ただしい東京の日々から思えば遠い遠い昔のことのようです。それは70年代に建築家が手がけた6戸ばかりの集合住宅で、今では珍しくなった、サッシュがひとつもなくすべて木だけで出来た住まいでした。
(写真は和室から庭を眺める猫たち。戦前のYAMAHA製のカフェテーブルセットを置いていました。)
木の扉を開けると石張りの床に三面摺りガラス障子扉の玄関。板張りの洋室から一段上がると、ウグイス色の塗壁の和室。奈良から運ばれてきた上質な木で造られ、鴨居は木と竹の枠ですべてガラス張りという和風モダン仕様でした。そして和室の向こうには年に一回、庭師さんが手入れしてくれる和風の庭。春は楓の青葉、初夏には白いサツキ、秋には楓の紅葉にキンモクセイの花が香り、小さな池にはメダカを飼っていました。
今思えばとても70年代らしい、マンションともアパートとも違った風変わりな佇まいで、障子や襖や鴨居などの和のしつらいをいかにモダンに仕上げるかという建築家の心意気が伝わってくる、和洋をしっくり折衷したまるで旅館のような居心地のよさでした。扉も窓枠も網戸も、お風呂の窓枠まで全部木造り。お施主さんもとても大切に手入れされてきて、時を経た味わいが醸し出されていました。
住んでいる時も心安らいで快適でしたが、木だけで出来た家がどれほどストレスフリーであったことか、今になってとても実感しています。ほど近くに詩仙堂が佇む東山の懐、ゆるやかに流れる時間の中で過ごしたあの部屋、それが心に贅沢で得難い時空間であったことは、ずっと忘れられないと思います。いつか家を建てることが出来るなら、あんな味わいのある木の家にしたい!と、夢見ています。